有機合成で病気や地球環境など、世界規模の課題に取り組む
岩澤 哲郎教授
Tetsuo Iwasawa
専門領域・
研究テーマについて
専門分野について教えてください。
私の専門分野は、広い意味では「有機合成化学」、中でも「医薬品化学・プロセス化学・精密合成・触媒」というキーワードで表される領域となります。この分野の根底には、「病で苦しんでいる人々を快方へ導いて幸せにしたい」という熱い想いや「地球環境を改善して豊かな生活を送りたい」という切実な願いが流れています。こうした想いや願いを自身の問題として捉えることのできる使命感あふれた方には、一生をかけるに足る、うってつけの分野です。
この分野は昔から日本が世界をリードしており、景気の浮き沈みにも比較的左右されにくいと言われています。日本は昔から「ものづくり」がとても上手ですからね。また、病気の克服や地球環境の改善は半永久的な課題であり、国境を超えた世界規模の仕事・ビジネスでもあります。薬や材料などの合成品は、石油や鉄とは異なり、地面を掘っても出てきません。合成化学者らが頭を使って知恵を絞り、体を使って実験を繰り返すことで見つかります。その過程は基本的に失敗と苦労の連続であり、その繰り返しの末に成功があります。この失敗と苦労は「不幸」ではなく、成功へと続く証であり、病気の辛苦と死の恐怖を除去するために必要な唯一の手段です。
したがって、将来この分野が成長発展する見込みは、現在も未来も変わりなく「大いにある」のみです。就職先の可能性としては、化学産業界・医薬製薬業界・プロセス化学業界であったり、大学や公設・私設の研究機関であったり、国内外を問わず幅広い業界が対象となります。成果をあげれば後世に残る知的財産を築くことになり、歴史に名を刻むことができます。一旗あげる夢を何歳になっても持つことができます。「我こそは」と思う受験生は、ぜひとも龍大で有機合成を!
この分野の面白さは、どんなところですか?
多くの学問分野の中でも、「頭と体の両方をフルパワーで使うしかない」数少ない領域ではないだろうか、と思います(逆に言えば、使えば誰でもなんとかなります)。また、どんな学生でも必ず個性を発揮できる場面が存在します。例えば、「カラム精製が得意」「再結晶操作が得意」「単結晶の作製が得意」「美しいと感じる気持ちが他の人よりも敏感」「実験自体がそもそも好き(理由なんかない! 好きなものは好き!)」等々。若者が自分にしかない可能性を見つけるのにふさわしい学問かと思います。
受験生に向けて
受験勉強のコツを教えてください。
行きたい大学を決めてから受験勉強をがんばることです。自分の偏差値に合わせた大学選びではなく、「この大学に行きたい!」という強い憧れに合わせた進路選びをすることです。行きたい大学のことと自分の本当の気持ちを知り、強烈かつ鮮烈な憧れや夢や希望を持つことが先です。そうすれば、人間は自ら進んで勉強するようになります。
もし先生が先端理工学部の学生なら、どんなプログラムを組み合わせますか?
「生命機能化学」と「数理解析」「現象の数理」「航空宇宙」「電子デバイス・マテリアル」等、過去には考えもしなかった学際領域の組み合わせです。学問は自由。固定観念からの解放が醍醐味です。自分のやりたいことをやりたいようにやればすべて良しです。無茶苦茶な組み合わせ、非常識な組み合わせ、ヘンテコな組み合わせ、そんな組み合わせから新しい価値が生まれます。自分の価値判断で組み合わせてください。「人に言われたからこうします」などと他人の意思で組み合わせないことです。