純粋な水とミネラルウォーター、人にとって「良い水」はどっち?
岸本 直之教授
Naoyuki Kishimoto
専門領域・
研究テーマについて
専門分野について教えてください。
システムとは「相互に作用する要素が集まり、全体として調和のとれた挙動・機能を持つもの」を言います。私の専門である「水質システム工学」は水質形成に関連するシステムを工学的な視点で捉え、これを理解し、制御するための学問分野です。人の体の大半を水が占めることからもわかるように、水は生命を育むかけがえのない資源です。日本にいると清浄な水があることが当たり前のように感じますが、世界全体では衛生的な水にアクセスできない人があふれており、SDGsでも「すべての人々に対して水と衛生的な環境の利用可能性を確保し、持続可能な管理を行う」ことが目標のひとつに掲げられています。水質システム工学は人を含めた生物全般を育む清浄な水資源を守っていくために、未来永劫、欠かすことのできない重要な役割を果たし続けると思います。
この分野の面白さは、どんなところですか?
蒸留水とミネラルウォーターはどちらがより良い水でしょうか?蒸留水は純粋な水ですが、飲んでみるとお世辞にもおいしいとは言えません。また、蒸留水中にバクテリアや植物プランクトンなどを入れると、増殖することなく死滅してしまいます。一方、ミネラルウォーターをおいしいという人は多いと思いますが、そのように感じるのは水中にさまざまな不純物が混ざっているためです。つまり、なんでもかんでも不純物を取って純水にすることが良いというわけではないのです。水質システム工学では、目的に合わせて適切な水質を持った水を必要量供給するための環境インフラをどのようにして作り上げるのか、という点について技術・経済・持続可能性といった観点から総合的に取り扱います。環境問題はいろいろな要素が絡み合った複雑な問題で、一筋縄では行きませんが、とてもやりがいのある仕事だと思います。
受験生に向けて
受験勉強のコツを教えてください。
公式の丸暗記ではなく、公式の裏に隠された原理・考え方を理解することが応用力につながります。高校1・2年生のうちは原理や考え方を理解することに注力すると良いでしょう。考え方を理解しても最初のうちはなかなか成績が伸びないかもしれませんが、入試で少しひねった問題が出てきたときに力を発揮できるのは、考え方を理解している人です。なお、受験では時間内に素早く問題を解くことが要求されます。なので、高校3年生になったら、1・2年生で培った考え方をベースに、受験テクニック(典型的な問題を素早く解く)を磨くことに注力していくと良いと思います。
もし先生が先端理工学部の学生なら、どんなプログラムを組み合わせますか?
もちろん私が関係している「環境インフラ」や「都市環境テクノロジー」です。それ以外では、「SDGs(持続可能な開発目標)」がおすすめです。SDGsは国連が主導する国際的な取り組みであると同時に、技術だけでなく社会システムなども含めた多岐にわたる目標です。これからの技術者は単に技術を極めるだけでなく、技術と社会の関わりについてもしっかりとした認識を持つ必要があると思います。「SDGs(持続可能な開発目標)」はそうした幅広い視点を醸成するのに良いプログラムだと思います。