自然科学を数学の言葉で明らかにする
深尾 武史教授
Takeshi Fukao
専門領域・
研究テーマについて
専門分野について教えてください。
私の専門は解析学です。解析学とは「極限操作によって新しい概念を獲得する学問」であり「自然科学を数学の言葉で明らかにする学問」でもあるということができます。解析学の中でも特に微分方程式というものを研究しています。中学校や高校で方程式について勉強しますが、「方程式を解く」とは与えられた条件を満たす数を見つけることでした。微分方程式の場合には与えられた条件を満たす関数を見つけます。そして、条件式に微分が入っているので、それを微分方程式と呼びます。さらに微分方程式には様々な種類があり、その中でも特に発展方程式と呼ばれる「無限次元空間上の微分方程式」に興味を持っています。私たちの住んでいる世界は「縦」「横」「高さ」の3つの基本要素を用いれば、どの位置も表現できるので、これを3次元と言うことにしましょう。色の世界は「青色」「黄色」「赤色」の3原色を用いて全ての色を表現できると考えれば、これも3次元と言うことができます。「無限次元空間」とは簡単に言えば、その全てを表現するには無数の基本要素を必要とする世界のことです。
中学校や高校で数学を学び、そこでは「具体」と「抽象」を行き来します。日常でもそれらの言葉を「より具体的に説明してほしい」「内容が抽象的だ」のように使います。数学の研究において、この「具体」と「抽象」がとても大切です。様々な自然現象を記述する「具体的」な微分方程式をそれぞれ研究してゆきつつ、それらに共通して成り立つ「抽象的」な構造を、発展方程式という枠組みで解明していくことが私の研究です。
専門分野の面白さは、どんなところですか?
高校で複素数を学んだとき、中学校までは「2乗して-1になる数などない」と考えていたところから、頭を柔らかくして「2乗して-1になる数をiとする」のように考え方を拡張しました。それまでの概念を崩さずに引き継ぎつつ、不可能な世界から可能な世界に物事を拡張するということは数学のみならず様々な場面で行われ、とても重要です。概念を拡張することによってその表現力が豊かになる一方で、簡単に行われていた計算や証明が急に難しくなることも多々あります。解けない問題に対して解けるための条件を追加したり解ける設定に直したりしながら、極限操作という手法を用いて物事の本質に迫っていくところが私の専門分野の面白いところです
受験生に向けて
受験勉強のコツがあればお教えください。
好きな教科、好きな分野をとことん追求する。
もし先生が先端理工学部の学生なら、どんなプログラムを組み合わせますか?
どの学修プログラムも最先端のサイエンスに繋がっていてとても興味深いですが、その根底には数学が関わっています。必ず興味のあるサイエンスのプログラムとともに数理解析のプログラムを組み合わせます。「基礎基本なくして応用なし」です。