飯田 晋司教授

不規則な多重散乱で生まれる波のパターンに法則性を見出す

Shinji Iida

担当プログラム

現象の数理

専門分野

物性理論(物理)

専門領域・
研究テーマについて

Q

専門分野について教えてください。

私は現在,ランダム媒質中を伝わる波の統計的性質の研究を行っています。イメージを得る為,左右に伸びた水路の水面を小波が右に向かって伝播している様子を想像して下さい。水路の途中に障害物がある場合を考えます。棒が不規則に多数たっているとしましょう。進んできた波がある棒に散乱され新しい波紋ができます。この波紋が別の棒や水路の壁にあたると更に新しい散乱波が生じます。こうして波が右に進むにつれ次々と新しい散乱波が生じ,それらの多数の波が重なり最終的に非常に複雑で不規則な波のパターンができるでしょう。こうしたパターンは障害物の位置や水路の形などの詳細により不規則に変化し,何かの法則性を持つ事は期待できない様に思えます。実際,波のパターンの一つ一つに対しては,規則的な波の伝播に見られる反射や屈折の法則に類するものは見出せません。しかし,多くのパターンの集まりに対する統計的性質,例えばある向きに出てくる波の平均的な強さ,あるいは平均値のまわりのばらつきの大きさ(分散と呼ばれる)などについては理論式を見出せる場合があり,それらについて研究をしています。

Q

専門分野の面白さは、どんなところですか?

上に述べた波の不規則な多重散乱による干渉効果から生じる統計的揺らぎは幅広い自然現象に現れます。極低温での電子の伝播,複雑な原子核反応などがその例です。更に,非常に異なるこうした現象の統計的性質が共通性を持つ事が分かってきました;平均や分散などの統計量は少数個のパラメーターを含む普遍的関数で現され,取り扱う系が電子であるとか,原子核であると かいう個々の系の特質は全てこれらの適切なパラメーターに繰り込まれるという事が(数値)実験,理論式などから明らかになってきたのです。どういう性質にどの程度の普遍性があるのか?このような 普遍性が現れる理由はなにか?などに興味を持って研究を続けています。

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